言葉の意味が曖昧なので、まず、言葉の定義づけをします。
[国語辞典の定義]
「悪口」 人を悪く言うこと
「愚痴」 言ってもしかたがないことを言って嘆くこと
「陰口」 その人のいない所で言う悪口
「噂話」 相手の「尊敬できるところを口にすること」
【僕がこの文章で使っている言葉の定義】
「悪口」
本人がいないところで言う批判、非難、嘆き。そのことを本人にすでに言っていたり、言う予定であれば該当しない。心の中は相手が悪い、相手が変わるべきだという気持ちに支配されている。
相談という隠れ蓑(みの)を着た「悪口」も多い。本人は「悪口」の自覚がなく相談と思い込んでいることが多いのでたちが悪い。相談を受けた人がアドバイスをしても「でも・・・」と受け入れない場合がまさにその証(あかし)である。自分を変えるつもりはない。
「陰口」は「悪口」と同じ意味に定義しています。
「愚痴」
励ましや激励などのエネルギーをもらうために自分の不甲斐無さを嘆くこと。
世の中のことを嘆くことは「愚痴」とはいいますが、性質は「陰口」に近い。
ではあらためて、「何故、悪口は言わない方がいいのか?」
それは、『悪口』は心に打つ麻薬だからです!
悪口を言う人の人生の歩みを見てみましょう。
ステップ1 快楽
悪口を言うと、気持ちが楽になります。
ステップ2 習慣化
ところが、実はそのたびに心は蝕(むしば)まれ、さらに悪口を言わざるを得ない状態になっていきます。
ステップ3 依存
そして中毒のようになりになり、悪口を言わないと禁断症状が起きるようになります。
ステップ4 破壊
ついに心は破壊され、周りの人の悪口や世間にたいする愚痴ばっかり言うようになります。人や状況の悪いところばかりが見え、不平不満をいつも感じている不幸な晩年が待っているのです。
いかがですか、麻薬と似ていませんか。
ステップ2の習慣化がどうして起こるか考えて見ましょう。
あなたがある人の悪口を言ったとしたなら、次の日
その人に明るい笑顔で接することができるでしょうか?
しにくいですよね。
多少なりとも後ろめたさや罪悪感があるのです。
ところが、そんな感情は抱きたくないものです。
その為にできることは、無意識のうちにではありますが、相手の悪いところをさらに探し出し、悪口を言わざるを得なかった自分を正当化しようとするのです。「ほらね、私が悪口を言ってしまうのもしかたがないことでしょう。」と。なんだか落ち着くのです。
そして、また悪口を言ってしまいます。
こういう風にして悪循環に入っていき、その人のことが嫌いになっていきます。
さらに悪いことに、相手も悪口言っている人の雰囲気を感じ取り、好かれていないだろうと感じてしまうので、なかなか二人の人間関係が良い方には進みにくくなるのです。
こういうからくりに気づかず悪口をいう習慣が続くと人生は残念な方向に向かっていきます。
僕は両親が共働きだったせいか、おばあちゃんが大好きでした。中学から寮生活でしたが、両親よりおばあちゃんのことをよく考えていたぐらいです。成人して、おばあちゃんの顔が見たくて時々会いに行ったのですが、年を追うごとにおばあちゃんの話は家族や、近所の人の悪口が増えていきました。そして晩年は渋い顔しか見たことがありません。どちらかというと会いに行きたくないようになったものです。僕は、なぜあの優しかったおばあちゃが・・・と不思議でした。
何故、おばあちゃんはああなったのだろう?
それがこの話を考え始めたきっかけになりました。
では、もう少し別の角度から考えて見ます。
悪口はストレス発散になるので必要だという方がいらっしゃいます。
事実だとは思いますが、危ない橋を渡っています。
そういう方は、ようは支持(ある意見・主張などに賛成して、その後押しをすること)が欲しいのではないでしょうか。「あなたが正しい」と味方が欲しいのです。自分のに自信がないので支持してもらって安心したいのです。
つまり、悪口を言うことは、自信がない人の特性の一つとも言えます。自信がないので、悪口の対象となっている人には意見を言えません。
では話を聞いてもらって支持をもらえば自信が持てるかといえば、そんなことはなく、逆にますます、自信がなくなっていくのです。
これも悪循環するのです。
心理学者ジョージ・ウェインバークは著書「自己創造の原則」の中で「あなたが何らかの行動を起こしたとします。するとそのたびに、自分のしたことの動機となった考えを強めているのです。」と言っています。
悪口を言って得られるものは「ひと時の快感」だけなのです。そんなものの為に「不幸な晩年」や「自信の喪失」が待っているのならば・・・
あなたは、悪口を言う人生と言わない人生
どちらを歩まれたいですか?
悪口は「麻薬」なので、すでに中毒になっている人がそれをやめるのは大変だと思います。しかし、本当の麻薬中毒よりまだいいみたいです。
私の病院の50歳くらいの女性の従業員さんのことです。患者様の愚痴をこぼしているのが耳についたので「何故、悪口は言わない方がいいのか?」の話をしました。その場では「愚痴ぐらい言わないとやってられないわよ」と不機嫌になられました。しかし、次の日「よく考えてみたら、院長の言うとおりだと思いました。」とわざわざ言って来てくれました。それから半年くらい経ったころ「最近、悪口はどうですか」と聞くと、なんとあの日から一回も悪口を言っていないと断言されました。何か心の変化はありましたかと聞くと、実は、うつ病気味で病院にもかかっていたそうですが、今はすっかり良くなったそうで、本当に悪口をやめてよかったとおっしゃいました。
聖書には「汝の敵を愛しなさい」とあります。苦手な人、嫌いな人の悪口を言うどころか、その人の幸せを祈ったり、その人の存在に感謝していらっしゃる人を知っています。すると、悪口をいう人と全く対照的なことが起こりそうですよね。その人を前にしていつも笑顔でどうどうといれるし、物の見方が肯定的になり、心はさらに健康になっていきそうです。相手の対応もそれに応じて変化しそうではないですか。私達のちょっとした有り方で人生は雲泥の差になると思いませんか。
悪口はやめましょう。自分や周りの人の幸せのため。