スマイル歯科がよく解る経営理念についての解説
1.自分にしてもらいたいと望むとおり、人にもそのようにします。
この言葉は聖書の「ルカの福音書6章31節」にある御言葉(みことば)です。この言葉を人に何かをするときの行動指針として用います。
簡単そうで結構奥深い言葉です。しっかりと理解しましょう。
まず、考えてもらいたいことがあります。
今まで何十人もの人と仕事をしてきましたが、職場の同僚に積極的に注意をする人はあまり多く見かけません。しかし、一方で「もしあなたのことで気がついた事があったら、僕は注意したほうがいいですか」と、尋ねると、99%の人が「はい、お願いします」と言います。また、入社日の朝礼の時に、「何か私のことで気が付いたことがあったらどんどん言ってください」という新人がいます。そこで僕が「あなたは、みんなの事で気が付いたことがあったらどんどん言ってくれるんですか」と尋ねると、戸惑ってしまいます。
不思議でしょう!
ほとんどの人が「自分がしてもらいたいと望む通り、人にもそのようにしていない」かもしれないのです。
どう考えたらいいのでしょうか?
「自分が相手の立場だったらどうされたいだろう」と考えてみる習慣がないのかもしれません。相手のことを考えていないわけではないのですが、相手の深い思いのところには立たず、浅い感情のレベルで考えてしまうのです。「こんなこと言われたら嫌だろうな・・・注意するのは、やめとこう;:」こんな具合です。
しかも、「嫌な思いをさせないように」と、“相手のため”みたいに本人が思い込んでいることさえあるのです。しかしそれは、自分が嫌われるかどうかを心配しているだけで自分の事しか考えていないとも言えます。
本当に相手のためを思って相手の立場に立って考えるとこうなります。
「注意されたら嫌だろうな」と感情のレベルでは感じてはいますが、「注意してもらえないと改善できないし、成長できないし、やはり、自分だったら注意してもらった方がいいな」です。
感情だけではなく思いの部分に焦点をあてることができるのです。自分だったらそうして欲しいから、嫌われてもいいから勇気を出して「やっぱり注意しよう!」となるわけです。ただし結果的にはまず嫌われないと思います。尊敬、信頼されていきます。
実例1)
30才頃のことです。久しぶりに親友から電話があって「今度の正月、ゴルフに行こうや」と誘われました。「行きたくない」と心によぎったのですが、すぐには断ることができず「2、3日考えさせて」と返事しました。「せっかく誘われたのに断ったら悪いなぁ」と感じたような気がします。これが浅い感情のレベルでの感じ方です。もし僕が相手の立場に立って考えていたら、「僕がどうせ行かないのであれば親友は他のゴルフメンバーを探さなければならないのですぐに断った方が助かる」と考えることができたと思います。そんなことには全く考えがいかず、2、3日ゴルフを断る理由を重い気分で探していました。自分のことだけしか考えていなかったのです。
今は、自分がその立場だったら、そうされたいのだからちゃんと断わろうという行動をとります。慣れるまではことわることに勇気がいりました。しかし、頑張って意識的にやっていると数年後には自然と言えるようになりました。また、断るときに、「誘ってくれてありがとう」とか「暖かくなったらまた誘ってね」を追加することが大事です。
「相手の立場に立つ」とはどういうことか、もう掘り下げてみます。
相手の立場に立って物事を考えるときは、次の2つの事を設定して考えることです。
①できるだけ相手になりきる。相手の考え方、価値観、感情、年齢、性別、立場、境遇、過去の経験など知りえる情報は出来るだけ頭にいれるということです。そのうえで「そういう自分だったらどうされたいだろうか?」と自分の気持ちを感じてみるということです。知りえる情報は出来るだけ頭にいれるというのはイメージで言うと下の図の重なっている部分をできるだけ増やそうということです。まったく重ねないで「自分だったらこうしてもらいたいから・・」というのは相手の立場に立っていない考え方です。
②配役を考えます。二通りあります。
1.相手の情報を頭に入れてできるだけ相手になりきった自分は、「ほんとうの自分からこう言われたら、どう感じるだろう」という具合です。一人二役です。
2.その人にとっての僕の立場と同じような立場の人にどう言われたいだろう、どうされたいだろうと考えます。(部下になにか言うときは、自分の上司を思い出して、「その上司にそういわれたら、どう感じるだろう」という具合です)
※1.がベストですが、2.が想像しやすいです。
そしてそのとき出た一番して欲しい考えを相手にしてあげるのです。これ以上の愛情はないと思います。
愛情は相手の「幸せ」「成長」「癒し」に向けられます。
その場で喜んでもらえないことは多々あります。しかし、そのことは大事なことではありません。一生懸命考えたこれ以上ない愛情表現であることに価値があるのです。結果は相手の問題です。どうのこうのできる問題ではありません。一生懸命考え行動しただけで充分に素晴らしいので、自分で褒めてやってください。
相手がして欲しいことを外すことも想定内です。外すことが当然と思ってもいいと思います。なぜなら、本当に外さないためには上の図を完全に重ねる必要があるからです。しかしそれは、相手の人生すべての映像をムービー見るというようなことなのです。無理です。つまり、外してがっかりするというのは「あの人にことはわかっている」というあなたの傲慢さに他なりません。
ただし、外しても手があるので大丈夫です。外したら、そのこと自体が新しい情報ですから、その情報を加味してもう一度考えるだけのことです。「情報を加味する」ということは上の図の重なる部分が増えたということです。
実例2)
10年程前、僕の誕生日にスタッフ一同が上下のジャージをプレゼントしてくれました。もらったのはありがたいのですが、僕のセンスとは全く違う着たくもないようなジャージでした。
あなたならそういう時どうしますか。
「着たくはないし、捨てるに捨てられず、押入れの奥に眠らせる」「関係ない人に譲る」のような回答が多いようです。
しかし、僕は考えました。相手の立場に立ったらどうなんだろうと。
「あまり着たくないものを我慢して着て欲しくもないし、気を使って押入れになおしておいて欲しくもない。とすると、やっぱり気に入らないと言ってくれた方がいいかな」
「とは言っても、下手に言われるとやっぱり気分が悪いよな」
「どう言われたら気分悪くないかな」
「ストレートに『買い替えてきてください』と言われたら、さすがに気分よくないよな」
「困ったな、なんかないかな」
「あ!そうだ、正直な気持ちを伝えた上で『せっかくだから、ぜひ着たいので、レシートがあるなら自分で買い替えて来てもいいかな?』というのはどうだろう」
そこで、目を閉じて想像してみたのです(これが大事!)。以前勤めていた病院で当時の院長にプレゼントしたとしてその院長がこう言って来たらどんな気持ちになるだろうと。
「これだったら全然嫌じゃないなぁ。むしろ誠実さが伝わるし・・」
「よし、これで行こう。」
そして実際にその通り実行し、10年くらいそのジャージを愛用させていただきました。
実例3)
院長の作文「金歯の話①」もそうですね。まずは相手の立場に立って歯を抜いたほうがいいなと思うので、「抜きましょう」といいます。ところが「抜きたくない」と言われます。つまり外したのです。しかし、さらに相手の立場に立とうとする人は、「どうして抜きたくないんですか?」と新しい情報を取り入れようとするのです。そこで、新しい情報“お母さんと金歯の思い出”を聞き、さらに、「それだったらどういう提案をされたら嬉しいかな」と感じて見るのです。そこまで考えたときに初めて「歯を抜いて、その金を別の歯に埋め込む。」という案が浮かんでくるのです。もちろんそれでもまた外すことはあると思います。
「人の嫌がることはしない」「人様に迷惑をかけない」という言葉がありますが、これは似ているようで全く違います。これらの言葉は人に何もしなくても成り立ちます。人に対しての関わりを消極的にしてしまうのです。一方「自分にしてもらいたいと望むとおり、人にもそのようにします」という言葉は人に関わって生きるということを示唆しています。これこそ愛そのものだと思います。結果、時には人に嫌がられたり、迷惑をかけたりすることがあるかもしれません。それを恐れる必要はありません。そういう場合は素直に謝ります。嫌がられたり、迷惑に感じられたこと自体が新しい情報ですから、その情報のもとで修正し、またかかわっていけばいいのです。
2.患者様がご自分の歯を大切にすることに立ち上がられ、すばらしい人生をおくられることに貢献をします。
患者様がご自分の歯を大切にすることに立ち上がられないパターンは大きく分けると2つあります。
ひとつは患者様がいろいろな事情により歯の治療をあきらめておられるパターンです。事情とは、お金が無い、仕事が忙しい、過去に歯医者で非常に嫌な思いをした。痛い思いをした、歯槽膿漏は治らないと聞いた、前歯は保険が利かないときいた、以前入れ歯を作ったがとても使えるものではなかった、などなどです。
もうひとつは高を括っていらっしゃるパターンです。歯が悪いのはわかっている けれどまだまだ何とかなるだろう。入れ歯になってもいいや。などです。
この病院ではその方たちに対しカウンセリング能力とモチベーション能力をフルに使って歯の治療と管理に立ち上がっていただくことに力を注ぎます。そして、その人が、すばらしい人生を送られることに役立ちたいと思います。
この部分が他の歯科医院と少し違うかもしれません。
実例4)
僕が40才の頃来院された、当時35才くらいで工場勤め風の男の患者様の話です。主訴の痛みがとれ、口の中をよく見ると、プラークは沢山ついているし、虫歯は多く、歯槽膿漏にもなっています。このままではいけないと思い、インタビュールームに入っていただき、口の中の状況を伝え、先々大変なことになるということを伝えましたが、覇気のないこの患者様は、「別に今は困ってないからいい」と目も合わさずに答えられました。先の事もその時はその時でいいとおっしゃいます。
「まいったな」と思いましたが、そんなときこの経営理念「立ち上がられることに貢献・・・」が脳裏をかすめるのです。
感じたままにきいてみることにしました。
「松田さん・・あれですよ・・なんか人生にもう希望がないっていうような感じですよね」
すると、少し笑みを浮かべて「そんな感じやね」と返されました。
心の内をもう少し聞いてみることにしました。
「夢はないって言っても、一生生きて行こうとは思ってるんやろ?」
僕も距離を縮めるためにタメ口に変えました。
「ま、そうやね」
それを素直に言ってくれたので、僕の心の中でモチベーションの方向が決まりました。
「そんなふうなら治療はせんならせんでいいけど、ちょっと僕の話を聞いてみん」と言いました。
「いいよ」
「一応、死なんで生きて行こうとは思っとるんやけ、どうせなら少しでも幸せな方がよくない」
「ま、そうやね」
思い切って自分の人生観を伝えてみることにしました。
「僕はさ、『自分を大切にしない人は幸せになれない』と思うんよ…。二十歳のころは・・自殺まではしきらんけど、飛行機事故とかで死ねるんだったらいつ死んでもいいという感じやった。けど、33才の時にあることがきっかけで自分を大切にしだした・・・・。そしたら最近、昔より随分幸せになったし、人生はすてたもんじゃないと今は思えるようになった・・・。松田さんにもあてはまると思うんよ。自分の歯を治療したり、歯磨きをして自分の歯を大切にすることは自分を大切にすることにつながると思うし、騙されたと思って半年くらい頑張ってみてみんやろか・・・・。ひょっとしたら何か新しい光が見えて希望が見えてくるかもしれんよ。」
すると、そう間もあけず、松田さんは僕に視線を合わせると、目を輝かして「分かった、やってみろう」とおっしゃったのです。胸がジーンとしました。
その後、松田さんは半年間の治療をやり遂げられました。
患者様が立ち上がられるために、自分でだめそうなら先輩、先輩でだめそうならDr.、Dr.でだめそうなら院長、という具合にスマイル歯科全員の資質を用いていきます。それでだめなら今はこの病院の力はそこまでということです。。
「あなたのおかげで、すばらしい人生を送れた」ともなるように親身に患者様に関わってください。
3.愛情を持って患者様と接し、患者様の気持ちを共有することによって、痒いところに手が届く、心温まる医療を提供します。
患者様は歯医者に来るときは不安いっぱいで来られると思います。初めての時はなおさらです。その不安を取り除いてあげるためにはいたわりの気持ち(愛情、ホスピタリティー)をもって応対します。そして、患者様の気持ちを共有するためには「何でも話していいんだ」「何でも聞いてもいいんだ」と感じていただく必要があります。そのためにはこっちが恐れずに言いたいことを言い、聞きたいことを聞くのです。自分が相手を信じず、自分が心を開かないのに患者様は心を開いてくださるわけがありません。
いい聞き方をするにはカウンセリング的技法が必要です。まず、受容、エコー、支持の技法を使います。それで、患者様は心を開かれ始め、自分が言いたいことを言っても受け取ってくれそうな気持ちになられます。そうして今度は痒いところを聞き出すために、質問、明確化の技術をつかいます。つまり、この項目を実践していくにはカウンセリング的技法の学びは不可欠となります。
特に基本となるエコーに関しては、日々の業務上会話で徹底的に指導していきます。
また、私たちは痒いところを探し出したとしても、その痒いところを掻いてあげるだけの歯科の技術や知識を持ち合わせておく必要があります。もし自分たちの技術がおぼつかない時は、他医院に紹介してあげることも当然です。
本当に痒いところを掻いてもらった患者様は喜びを感じ心温まると思います。時には感動もあるはずです。「背中が痒い」と言われて、おおざっぱに背中全体を掻いたり、痒いところの付近を掻いたりはしたくありません。
4.笑顔、活気に満ちあふれる職場をつくります。
挨拶は意識的に笑顔を出して行います。自分の笑顔を使って仲間や患者様の笑顔を作り出していってください。
患者様の笑顔に意識のない自分たちだけの笑いは禁じます。
笑顔、活気はあなたのエネルギーが外に向かって出ている状態です。あなたのエネルギーを職場の仲間やこの病院を慕ってきてくださる患者様に出して与えて欲しいんです。みんな寂しかったり、孤独を感じたりしているんです。大事な仲間、患者様の為にエネルギーを出しあいましょうよ。
根底には周りのみんなからエネルギーをいただいているという感謝の気持ちを持つことが必要だと思います。そしてその感謝の気持ちを表現しようという意志を持ちます。意志の力で意識的にエネルギーを出していきます。
周りの人にいつも笑顔がなく、いつもブスッとした状態だったら生きていく力は沸いてきません。生きていけているのは、もしかしたら、そういう意識のある誰かが笑顔を出してくれているからかもしれません。もし、そういうことを考えたことがないとしたら、あなたは恩恵にあずかっている側かもしれませんよ。自分が源で生きて行きましょうよ。
5.意欲的に学び、行動し、人として、スタッフとして成長します。
自分のことを好きだといえて、自分に自信を持ち、自分を誇れ、人生は楽しいと言える。そんな人間に成長しあいましょう。あなたが、学び、行動することはあなたの毎日の一番長い時間を過ごす大事な場所である職場を自分の手で過ごし易くすることであり、同時に、自分の家庭生活、友人関係を豊かにするために役に立つことだと思います。自分が主人公として人生を造っていきましょう。
がむしゃらに働くだけではなかなか人生は進展しにくいものだと思います。自分自身に時間、費用を投資することが快適な人生を送る為には必要不可欠だと思います。
現代は情報が次から次へと流れ込み激流と化しています。そこを自由に渡るには泳ぎ方を学ぶように生き方を学ばなければ無理なのです。学ばなければ、人生は流されていきます。学んだ人だけが、思うところに渡れ、さらには激流を楽しめるようにさえなるのです。学ばずに幸せになりたければ情報がほとんどないジャングルの奥にでも移住してください。
学ぶ内容は、
人間関係のこと、技術的なことです。
「行動」とは、
- 責任(気付いた事をほっとかないこと responsibility)をとること
- 改善改良を提案すること
- 仲間の成長に貢献すること、
- 仲間の成長に貢献すること
- 目標をたてること
- やるといったことをやること
- 可能性を追求すること
- 自分を好きになる行動を選択すること
をさします。
ちなみに、行動しない人のパターンは、
批判、怒り、グチ、「無理です」即答、しらけ、ふてくされ、依存、甘え、被害者になるなどです。